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2011/12/11

『リアル・スティール』観賞。

 ロボット・ボクシング映画『リアル・スティール』観てきました。
 監督は『ナイト・ミュージアム』シリーズでファミリー向け映画の実績をあげたショーン・レヴィ。



 面白かったです。最近僕が調べていることと重なる点があったので、自分の頭の中を整理する意味もこめて、ネタバレを避けつつ感想みたいなものを書いていこうかと思います。
 ダスティン・ホフマンの『クレイマー、クレイマー』的な父子のドラマに、『ロッキー』的な正しいスポ根ドラマツルギーを足し、『トランスフォーマー』ばりの緻密な特殊効果で盛り上げるという、とても豪華な映画です。アクション・シーンが予告編を見て想像していたのよりもずっとエキサイティングでした。動画枚数が多いアニメが直感的に気持ちいいのと同じで、ロボットが「人間そっくり、あるいはそれ以上の人間らしさ」で動くことの快感がしっかりと表現されています。ボクシングという競技の本来の面白さを描くために、一度人間の身体性を排除して、改めて構築するという……面白い試みですよね。
 僕が特に気に入ったのは、主人公の父子が操るロボット「ATOM」の描写。凄くよくできてます。CGや特撮が、というのではなく脚本のレベルでしっかりしている。ロボットの可能性を示すという、科学的な視点からもしっかりしている。面白いのは「模倣」と「自己鏡映像認知」です。
「ATOM」は旧世代のスパーリング用ロボットという設定。
 しかし、どこか特別なところがある(少年とATOMの出会いには、エヴァンゲリオン第一話を彷彿とさせる演出があります)。ATOMの最大の特徴は「シャドー機能」です。見たものをそのままそっくり「模倣」するという機能。これがただの工業的な機能なのか、それとも「ATOM」の特殊な「才能」なのか、劇中ちょっとぼかしてあるんですよ。
 模倣、というのは生物にとってとても重要な行為です。
 ちょっと引用しますね。
 マイケル・S・ガザニカ(心理学教授)の著書『人間らしさとはなにか?』より。

 こうした物真似行動はどれも、社会的相互行為を円滑にする。無意識のうちに、脳のあの自動的な部分の奥深くて、あなたは自分と似た人たちとの関係を形成し、彼らを好ましく思うのだ。(中略)このようにあなたが誰かを真似ると、その相手は共感や好意、スムーズな相互作用を育み、あなたに対してだけでなくあなたの周囲の人に対してもポジティブに振る舞う可能性が高い。この、向社会的行動の強化を通じて人々を結びつける力は、集団を一つにまとめ、数の多さからくる安全を促進する社会的な接着剤として働くことで、適応上の価値を持つのかもしれない。

 この映画でも、ATOMは模倣行動を通じて人間の登場人物たちと強いきずなを築いていきます。人間が生まれて、最初に行う社会的な行動が「模倣」です。赤ん坊が、大人に笑いかけられると自分も笑い返す、という。それこそが共感を生みだし、社会性を強化し、人間の人間らしさを形成していく。ATOMの模倣がただの「機能」でないとすれば、ATOMはただのスパーリング・ロボットではなく、何らかの偶然か開発者の意志によって実験的な「人間性」を付加されたことになる。

 これがただの深読みではないことが、少年とのやりとりや、ATOMが試合の控室で「鏡を見ている」シーンでわかります。意味深な演出で、何か理由がなければ絶対にカットするシーンです。鏡を見るというのも、生物にとっては特別なことです。鏡を見て、それが「鏡に映った自分だ」と認識することを、「自己鏡映像認知」といいます。類人猿にはこれができます。サルにはできません。自己鏡映像認知ができる動物は、ごく少数に限られています。
 人間でも、多くの一歳児は自己鏡映像認知ができません。平均的には、二歳を過ぎたころからできるようになるそうです(確かに、僕の息子もそんな感じでした)。二歳というのは、幼児が急激に「自己」を意識し始める時期でもあります。強い自己意識があるからこそ、他者を意識することが可能になり、そこから共感や視点取得といった能力につながっていくわけです。控室の鏡は、さりげないですが、ATOMが「本当に特別」であることを暗示する重要なシーンだと思います。

 監督か脚本家か、それとも映画の科学アドバイザーなのか、とにかく誰かがATOMに特別な才能を託そうとしました。思い切りハードSF方向に舵を切ることも可能だったはずですが、スタッフは恐らく「あえて」純粋に娯楽とドラマに集中した。王道の物語の背後に流れる科学的なマインドも含めて、『リアル・スティール』はここ最近公開されたいわゆる「ロボットもの」映画の中でも出色の出来栄えだと言えるんじゃないでしょうか。
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