2012/05/30

A little cute Iron Maiden

 角川書店より『ちょっとかわいいアイアンメイデン』(深見が原作、漫画はα・アルフライラ先生)、そして徳間書店から『ヤングガン・カルナバル文庫版8』のそれぞれ見本が届きました。どちらも書店に並ぶ日が楽しみです。6月4日くらいまでには発売されているはずです。
 そして、お世話になっている雑誌「なのエース」を中心に、『夏コミなの!』というフェアが開催されます!  『ちょっとかわいいアイアンメイデン』も対象コミックスにくわえていただきました。単行本ではアルフライラ先生の加筆修正にくわえて、僕も拷問に関するコラムを書き下ろしています。
(公式)
http://www.kadokawa.co.jp/fair/201205-02/
 さらに女子校拷問部漫画『ちょっとかわいいアイアンメイデン』単行本について。角川の商品詳細ページに掲載されていたので、こっちでも書いておきます……帯の推薦文は、虚淵玄先生にいただきました! うおー! ありがとうございます!





 以前、『ちょっとかわいいアイアンメイデン』の連載が雑誌で始まったときには、「強烈な拷問シーンがある映画特集」という文章を書きました。
(過去更新『良識を疑う! 映画の拷問シーン個人的ベスト10選』)
http://fmkkoe.blog27.fc2.com/blog-entry-555.html
 今回も、女子校の拷問部青春さわやかストーリー『ちょっとかわいいアイアンメイデン』単行本発売を記念して、ここ一年くらいの間で(自分のなかで)話題になった拷問シーンを特集したいと思います。前回映画ばっかりだったので、今回は小説中心で。



 まずはマーク・アレン・スミス『尋問請負人』。拷問のプロが主人公のサスペンス小説です。帯の煽り文、「その男の手にかかれば、口を割らぬ者はいない」って超頼もしい!
 あらゆる拷問のテクニックに通じた主人公。報酬をもらって、どんな情報でも対象から引き出す。すなわち情報獲得業(インフォメーション・リトリーバル)。「拷問の達人で、感情に乏しく、暴力に強い。ファーストフード店と薬局に入ったことがない。時々かわいい猫を肩にのせている」という主人公のキャラクター造形が最高です。
 拷問のプロである主人公の噂が、「この業界の常識をくつがえす驚異の新人」として闇の世界で広がっていく。いいですね。拷問業界の驚異の新人!
 ちなみにこの『尋問請負人』。ツイッター上で教えていただいた一冊だったりします。女子校拷問部漫画の原作を担当しているおかげか、あちこちで「こんな凄い拷問がありましたよ!」と自然と情報が集まってくるようになりました。ありがとうございます!
 小説『尋問請負人』の中から。お気に入りのセリフをちょっとだけ引用。
「今回の仕事は事実上のノーリルだ……わかるか? ほぼ釈放の見込みなし(ノー・リリース・ライクリー)だよ」

 かんじんの拷問内容も充実していました。主人公が行うのは、僕が好きなスプラッタ系とは違う、かなり知的で詰将棋のような拷問です。目からうろこが落ちるような描写も多々ありました。主人公の拷問は、哲学的なところまで踏み込んでいます。彼の中では価値観の逆転が頻繁に行われる。彼が考えるのは「自分にとって拷問とはなんなのか」ではなく、「拷問される人間にとって拷問とはなんなのか」ということ。途中で、「動物のリスを上手く高い木からおろすには」というわかりやすいたとえ話が入ります。
(本分より引用)
リスの思考回路が恐怖から逃れられるのは樹上にいるときだけだとすれば、ガイガーの目標は、ジョーンズ(対象者)に樹上へ戻れないかもしれないと恐れさせることではなく、樹木の存在自体忘れさせることにあった。

アメリカでの評判とかよく知らないので見当違いかもしれませんが、これ映画化しそうな気がするんですよ。主演はダニエル・クレイグ。ハマリ役だけど、ハマリすぎていて「意外性がない」とか言われるところまで見えてます。

 次に紹介するのはフェルディナント・フォン・シーラッハの『犯罪』。シンプルなタイトルです。ずばりそのまま「犯罪」がテーマの連作短編集。文章はあっさりしているのに、どのエピソードにも不思議な人情味があふれています。強烈な拷問描写があるのは、由緒ある茶碗をギャングから取り戻そうとする日本人タナタ氏のエピソード。拷問行為そのものよりも、結果誕生した死体描写のほうに重きが置かれています。「過程を省略する」ことで、読者の想像力を喚起するスタイルです。

 そして僕が大好きな飴村行先生の『粘膜戦士』。架空の戦中を舞台にしたグロテスク・ホラー短篇集。特殊なムカデを使った凄まじい拷問シーンがある「極光」がお気に入りです! 先述の『尋問請負人』『犯罪』と違って、これは正統派(?)のスプラッタ系拷問スタイル。上品なやりかたもあっていいし、もちろんこういうのも楽しい! いや、単純に「楽しい!」とか書くと語弊がありますね。拷問とは本来「やってはいけないこと」なので……。

 ここからは映画の話題。サミュエル・ジャクソンの『4デイズ』をレンタルで鑑賞。結局、観たあとすぐに近所の店でブルーレイを購入しました。
(予告編)

 アメリカ国内の3都市に仕掛けられた、3つの核爆弾。所在は不明で、4日後に爆発する。犯人は逮捕されたものの、爆弾の位置を吐こうとしない。捜査を担当するのはFBIの女性捜査官。しかしそこに、CIAが用意した尋問のスペシャリストがやってくる……。
 犯人を吐かせないと核爆弾が炸裂する。対立する現場、保身に走る上層部。いくつか引っかかる点はあるものの、これはよくできた拷問映画! 観ている間ずっと、拷問に関するあれこれを自問自答してました。僕がこの手の作品を愛好する理由の一つに、拷問が「人間に究極の選択を迫る」瞬間だから、というのがあります。人間の、「人間らしさ」がむき出しになる瞬間が好きなんです。

 最後にもう一本。『スマグラー』。これもレンタルで鑑賞。これなら劇場で観ておけばよかったなー的な一本。原作は『ウシジマくん』真鍋昌平。主人公は、生まれてからずっと何一つやり遂げたことのない若者。そんな主人公が非合法のブツを運ぶ「スマグラー」になり、殺しと凄絶な拷問に巻き込まれる。
 凄く好きなシーンがあるのに、「これはちょっとなあ……」というシーンも同時に存在していて難しいところ。でも拷問シーンは本当によかった! あえて分類するなら、主人公の本質や底力が試される「試練系」の拷問です。それにしても「上は軍服、下半身は紙オムツ」姿の高嶋政宏にだけは拷問されたくないですよね……。
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2012/05/22

Tinker,Tailor,Soldier,Witch

 仕事が行き詰まったので(わりといつものこと)、気分転換に新宿で映画。ジョン・ル・カレ原作の『裏切りのサーカス』と『ストライクウィッチーズ 劇場版』(2回目)をハシゴで観てきました。『ストライク』は一回目買い忘れていたパンフレットをしっかり入手。そして『サーカス』の完成度の高さは本当にヤバかった! せっかくなので、今日はこの二本について書きます。
 まずは『ストライクウィッチーズ 劇場版』の感想から。

 劇場版『ストライクウィッチーズ』。TV版を観てた人には説明不要の美少女空戦アニメ。さすがに劇場版はマズルフラッシュと空薬莢の飛び散り方が美しい! バルクホルン姉さんがMGの加熱した銃身を交換するシーンもあって、戦闘シーンは大興奮。細部がよくできていると全体が引き締まる好例です。宮藤芳佳さんは、もう完璧に少年漫画の熱血主人公路線でしたね。今回の芳佳さん、戦闘中に『導火線』のドニー・イェンみたいな鼻血の流し方をします。ここ最近見た中では一番熱いキャラクターに仕上がっていました。

 そして、『裏切りのサーカス』。映画は凄くよかったのに、いまだに邦題が納得いきません……(これもわりといつものこと)。原作の『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』ってタイトル、超かっこいいと思います。

(予告編)
 それはさておき、この映画。リアリティのない「説明セリフ」が極力排されているのが凄いです。それでも、決してわかりにくくはなってない。ライムスターの宇多丸がラジオの映画評の中で、「電話をとったキャラクターが、いきなり『なに! **が**しただと!?』と口にするような、現実にはありえない会話するのはもうやめませんか?」という話をしていて、少なくともこの『裏切りのサーカス』に関してはそういう心配を一切しなくていい。監督が、観客の読解力と俳優の演技を「信頼して撮った」結果でしょう。(でもまあ、ついついやっちゃうんですよ……。こんなこと書いておいてフォローするのもナンですが、小説でも脚本でも、いざ実際に自分でやってみると、無意識のうちに説明過多になることがたまにあります。それは本当に、まったく故意ではなく)
 監督はトーマス・アルフレッドソン。超傑作『ぼくのエリ 200歳の少女』でハリウッドから注目された人です。『ぼくのエリ』を観たときにも思ったんですが、残酷シーンから「逃げない」監督さんなんですよね。『裏切りのサーカス』でも、何箇所か強烈な殺人シーンがあります。しかしそれは無意味な残酷さではなく、諜報の世界の非情さを描くために絶対に必要だったと伝わってくる。残酷シーンを入れると少年少女が劇場に入れなくなるので、興行的な判断で削除されることが多いんですが、この監督さんにはそういった「ぶれ」がない。『ドライヴ』のニコラス・ウィンディング・レフン監督も同じタイプで、とにかく次回作も気になります! 私、気になります!

 で、ふと思ったのは……。
『裏切りのサーカス』と『ストライクウィッチーズ劇場版』。ジャンルも方向性もまったく異なる二作品ですが、続けて鑑賞すると共通点がありました。それは、「熱心なファンへのサービス精神」です。
『裏切りのサーカス』はジョン・ル・カレ原作。僕はわりとエスピオナージ(スパイもの)が好きなので、『寒い国から帰ってきたスパイ』や映画原作『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』を含むスマイリー三部作くらいは読んでます。原作の特徴は、徹底的なリアリティと文章からにじみ出る疲労感。非情な世界で戦うことに疲れきった男たちに、緻密で地味な調査描写を通して身体感覚が重なってくる。だから僕は映画版にも「心地良い疲労感」を求めて劇場に足を運んで、その欲求は見事に満たされました。
『ストライクウィッチーズ劇場版』を鑑賞するのは、当然TV版のファンという人たちが圧倒的に多いはずです。高村和宏監督は、ファンの思いに応えるため、劇場版に大量のウィッチたちを投入しました。いわゆるワールドウィッチーズです。大スクリーンでニパやアメリーを観ることができてそれはもう興奮しましたよ! 他にも、バルクホルンの過剰なシスコンぶり(そして宮藤芳佳への執着)や、リーネと芳佳の甘々なやり取りなど、期待していたものがしっかり(期待以上に)描かれているわけです。
『裏切りのサーカス』も『ストライクウィッチーズ』も、劇場をやる前に「すでにファンがいる」作品であり、ファンには劇場で「みたいもの」「みたくないもの」があります。この二作品は、そんなファンの思いの汲み取り方が絶妙であり、製作者たちの姿勢にはなんだか通じるものを感じてしまったのです、個人的には!(強引なまとめ)。……とはいえ、ある程度の予備知識があればどちらも初見でも楽しめるように工夫されているのも事実。公開規模はそんなに大きくありませんが、大スクリーンで観ることに価値のある映画です。


 これはどうでもいい話なんですが……。僕が持っている『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』は1986年発行の菊池光翻訳版です。amazonで見ると、中古価格がかなり上がっていてびっくりしました。新訳版はちょっと読んでみただけで詳しいことはよくわからないのですが、どうなんでしょうかね……。時間があるときにでも読み比べてみます。
 翻訳者によって違いはあるものの、基本的にジョン・ル・カレの文章は描写が細かくてねちっこい。読むのに時間がかかります。しかしその文章の「ねちっこさ」は、プロのスパイたちの「観察力」を表現するために必要不可欠なものなんですよね。スパイは細かいことまで気づく。だから作者は細かく書く。『スマイリー三部作』では、英国諜報部、香港死闘篇『スクールボーイ閣下』が一番好きです。
2012/05/17

映画感想。

 凄くきつめの締め切りをいくつか抱えています(まだ終わってません……)。
 それでも、僕は定期的に映画館に行かないと体調を崩してしまうので(言い訳)、そこだけはなんとか時間を作るようにしています。いい映画、いい読書を燃料にして走るポンコツ機関車みたいな……。
 で、ここ最近の映画の感想など。

・『ブラック&ホワイト』
 二人のCIA工作員が一人の女を奪い合うアクション系ラブコメ。「俺も男としてもっと頑張らにゃいかんなあ……」と、そんな気分にさせてくれる映画です。本当に。アメリカ人は恋人のためにはここまでやるのか! と戦慄しました。体を鍛えるのは当たり前、金も使えばコネも使う、おまけに悪党には命を狙われるし……厳しい世界観です。
 テンポがよくて、アクションにはキレがあり、笑えるシーンもたくさん。ほんのり感動的なシーンまである。「プロがプライベートのトラブルに全力を出す!」というプロットは、なんとなくシュワルツェネッガーの『トゥルーライズ』の前半を思い出しますね。
 ヒロインの、親友にあたる女性キャラクターが軽くハチャメチャで印象的でした。ヒロインが「彼氏ができない」と愚痴ると、親友は「出会い系を使え」という。
 ヒロインは「出会い系サイトには猟奇殺人鬼がいる。皮を剥がされる」と言い張る。
 するとその親友は「いたとしても、20人に1人くらいよ」

 主演の一人、トム・ハーディの総合格闘家っぷりがハマっていたので、格闘戦ももっと見たかったなー、と思ってたんですが、彼は『Warrior』っていうそのものズバリな金網リング映画に出てるんですよね。(結局、日本公開の決定が待てなくて輸入もの北米版ブルーレイで『Warrior』鑑賞しました。これ以上リアルにするためには、あとはプロ呼んできて実際に試合させるしかないんじゃないか……と思っちゃうほどの完成度)
『ブラック&ホワイト』は、銃撃戦のシーンで、腰の位置で抜いた銃をそのまま連射するのがかっこよかったです。コンバット・シューティングに似たような動きがあるんですよね。抜き撃ちをして、それから徐々に構えを整えていく、という。
(参考動画)


・『タイタンの逆襲』
 一作目よりも確実に面白い二作目、というちょっと珍しい例。序盤のVSキメラ戦で、緊迫感あふれる素晴らしい「横移動」のカメラワークがあって、そこでぐっと心をつかまれてしまいました。神様が神様をぶん殴った時に出る「ゴキンッ!」という打撃音と、巨神クロノス戦がとても良かった。ヘパイストスの迷宮がかっこいいので、ぜひ3Dでの鑑賞をおすすめです(あ、でもこの更新が終わるころには上映終わってますね……)。この映画を観た洋ゲー好きなら、誰でも『ゴッド・オブ・ウォー』を連想すると思います。主人公のペルセウスが、大型のモンスターに鎖を巻きつけて引っ張るシーンなんて、いつどこでボタン連打のマークが出てきてもおかしくなかった。

・『ラブ・アゲイン』
 大人向けのラブコメ映画。レンタル鑑賞。これはブルーレイで買おう! 出てくるキャラクターがみんな魅力的という、気持ちのいい一本。特に、ベビーシッターの女の子とライアン・ゴズリングが超可愛いかったです。
『ドライヴ』が最高だったので、ライアン・ゴズリングの演技に期待してレンタルしました。いい演技しますね。ライアン・ゴズリングは、「何も考えてないけど悪い人じゃなさそう」な顔、「背景のない空虚な善意の表情」が演じられる稀有な役者さんだと思います。

・『灼熱の魂』
 中東が舞台の、カナダ・フランス合作映画。宣伝や予告で「衝撃のラスト!」というのを強調してるんですが、本当に衝撃的でした! 英雄も勝利者もいない戦争映画です。
 重くて残酷で、物凄い打撃力を持っている一本。ラストに関しては「衝撃的!」か「悲劇的すぎて、逆に白ける」という風に意見が二つに分かれるかも。もちろん僕は前者ですが。「真相」を知った主人公の一人が「ヒィッ」って悲鳴を漏らすシーンがあるんですが、その声がリアルすぎて本当にトラウマになりそう。よくあんな演技がつけられたもんだと感動します。
http://shakunetsu-movie.com/pc/

・『タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら』
 ホラーコメディ。アメリカの田舎町で、遊びに来た大学生グループに「外見が異様に怖い」という理由だけで連続殺人鬼と勘違いされてしまう二人の男が主人公。『エンジェル伝説』や『エリートヤンキー三郎』のスプラッター版みたいな感じ。面白かった! ええ、こんなつまんない理由で人が死んでいいの!? と戸惑いつつも、しっかりコメディとして成立しているのが不思議な感じ。笑いの背後で、「ディスコミュニケーション」というテーマがしっかり通っているのが上手い造りです。