2011/08/05

文庫版4巻と、最近観た映画の話でも。


『ヤングガン・カルナバル』シリーズ文庫版最新刊。
 第四巻『天国で迷子』発売中です。よろしくお願いします。

 あまりに仕事が忙しくて映画を観る本数がちょっと減っていました。しかしそれもようやく一段落。富士見ファンタジア文庫から『GENEZ‐7』が9月発売予定。そしてもう一冊、気合いを入れ過ぎて本当に苦労したバイオレンス冒険小説(恐らくハードカバー単行本)が著者校までいきました。単行本のほうの詳細はもう少しお待ちを。ヤバめの締め切りを乗り切ることができたので、ここ最近はわりと多めに映画館へ足を運んでいます。

 話題作『トランスフォーマー ダークサイド・ムーン』観てきましたよ。
 洋楽ファンの前で「Bzが好き!」と言うとバカにされそうな気がするのと同じで、映画好きの間で「マイケル・ベイが好き!」ってなんだか言いにくいんですよね。でも好きです。マイケル・ベイ。派手なアクションと爆発、クラッシュが優先で、確かに演出も脚本も雑なことが多いんですが、「やりたいことがはっきりしていて」「わかりやすい」って大事なことだと思うんですよどうでしょう。
 で、TF新作について。前半から中盤にかけては、もしかしたら「マイベスト、マイケル・ベイ作品」が更新されるんじゃないかってくらい最高でした(ちなみに現時点のマイベスト、マイケル・ベイ作品は『バッドボーイズ2』です)。序盤はアポロ計画を使って「アメリカ人はたまらんだろうなあ」というシーンの目白押し。『X‐MEN ファースト・ジェネレーション』もうそうでしたが、今、ハリウッドでは60年代を描くのが流行なんですね。ケネディ政権の描写は短いですが丁寧で面白かったです。「お、これはマクナマラ国防長官かな。似てる俳優さんだなー」とか。
 でも、後半の展開がもったいないんです。
 ディセプティコン(デストロン)たちが、「弱い者には強く、強いものには弱い」状態。ネタバレを避けて書きますが、ある大事な戦いも本当にあっさり決着がついてしまって、心の中で思わず「○×よわッ!」と突っ込んでしまいました。オートボットのリーダーであるオプティマス・プライムが「工事用のワイヤーに引っかかって動けない」という展開もいただけない。それでもやっぱり、破壊と爆発は本当に掛け値なしで凄い。3Dで空間を演出する技術も素晴らしいの一言で、オープニング、サイバトロン星の戦争シーンだけでも料金分の価値はあると感じました。とにかく、劇場で観ておかないとどうにもならない「映画らしい映画」です。

 次も劇場公開中。ニコラス・ケイジ主演『デビルクエスト』。
(予告編)


 みんな大好きニコラス・ケイジ。原題は『Season of the Witch』
『デビルクエスト』ってなんだかこの邦題、「漫画やアニメの劇中で、キャラクターたちがプレイしているゲームのタイトル」みたいですね。『ゆるゆり』で京子と結衣がいつもやってる『なもくえ』的な。まあ、邦題のことはさておき、僕はニコケイの「顔」がとにかく好きです。あの常時困っているような目つきとちょっとだらしない口元は、すでに「癒し系」と言っていいんじゃないでしょうか。しかも今回の新作ではロン・パールマン(『ヘルボーイ』の人)と共演! この二人が話してると画面が濃ゆい! オチもひどいしアクションも緩いし、なんだかなあという感じなのですが、ニコケイとロン・パールマンのボーイズラブ的なイチャつきかたが楽しめたので個人的には満足しました。

『海洋天堂』


 ジェット・リーがアクションを封印して挑んだヒューマン・ドラマ。最近荒んだ映画ばかり観ていたので、久しぶりに「まともな人間はいいなあ」と心の底から思える良作でした。でも、最初と最後に出てくるメッセージは余計だったと思う。かなり「泣かせること」に重点をおいた構成になっているので、人によっては色々と言いたいことが出てくるかも、といった感じ。演出は抑制が効いていて、大袈裟だったり感情的になりすぎることもなく好みです。生真面目さが全身から滲み出るジェットの魅力が爆発。

 ここから先は劇場ではなくDVDで観賞したものを。
『悪魔を見た』


『悪魔を見た』を観た(と、言いたいだけ)。サカナクションの「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです』を夜に聴いた」みたいな。まあそれはいいとして。本当は劇場で観たかったんですが、締め切りや公開劇場の遠さの問題で見逃してしまった一本。DVDで観賞したあと思ったのは……「やっぱり劇場で観ておけばよかった!」
 この映画の凄まじさを、同じ映画館に集まった観客同士で共有したかった。きっとみんな、似たようなタイミングで「おおう……」とか「うわあ……」って声を漏らしたと思うんですよね。凄かった。とにかくとんでもない映画でした。観終わったあと「しばらく暴力や殺人の映画はいいや……」と思ったくらいに。でも、レンタルの返却期限が近かったので、すぐに『MAD探偵』と『冷たい熱帯魚』を観なきゃいけなかったんですが。
 最初はレンタルDVDで観て、結局すぐにBDを購入しました。BDにはインターナショナルバージョンも収録されているらしいので……。
 憎き猟奇殺人犯のキャッチ・アンド・リリースを繰り返す主人公の心理は、はっきり言ってまったく共感できないし理解もできないんですが、それでも異様な迫力に引っ張られたままあっという間に過ぎる二時間ちょい。観たところで人生は豊かにならない、それどころか悪い夢に出てきそうなヘビー級の一発ですが、悪や殺人、復讐について何か考えたくなったときにはぜひ、おすすめです。

『MAD探偵 ‐七人の容疑者』


 香港映画。ジョニ・トーとワイ・カーファイの共同監督。人の心を読む特殊能力を持った元刑事の探偵が、七重人格の犯罪者を追跡するサイコ・サスペンス。とにかく演出が上品。鏡を使って多重人格を表現するシーンなんて、言葉にするとありふれてますがゾクゾクするような映像に仕上がっています。とにかくクレイジーに突き抜けた主人公の造形もいい感じ。序盤、いきなりゴッホのように自分の耳を切り取るシーンで心をつかまれます。

 ここからさらに残酷な話題に入っていくので苦手な人は注意で。
『悪魔を見た』と『MAD探偵』で、立て続けに「切断された耳」が登場したんですね。一日に二回もそんなもの見るなんてどんだけ偏った映画を選んでるんだと。そこでちょっと、他に似たようなシーンがある映画を思い出してみました。耳を切断する映画特集。
 真っ先に出てきたのは『レザボア・ドッグス』。これはもう説明不要ですね。拷問映画特集のときにも触れましたし(http://fmkkoe.blog27.fc2.com/blog-entry-555.html)。インパクトも残虐性もかなり高い。
 で、レザボアよりもかなり古めの映画で『続・荒野の用心棒』なんていかがでしょう。マカロニウエスタンの金字塔。原題はズバリ『DJANGO(ジャンゴ)』。武器を隠した棺を引きずって歩くその強烈な主人公の姿は、ハリウッド映画はもちろん、数多くの漫画やアニメにも引用されました。放浪する一匹狼の主人公、虐殺、拷問、ガトリングガン、瀕死の状態からの逆転劇……。いわゆるマカロニ的なものが満載の一本。
「ほう、でかい耳をしてるな」
 と、悪役のウーゴ将軍が笑いながらスパイをしていた神父の耳を切り落とします。
 ただ切るだけではなく、それを口に突っ込むという残虐! ひでえ!
 あと、ついさっき『カーズ2』観てきたんですが、主人公たちがイタリアに行くと、ジャンゴことフランコ・ネロが声をあてているキャラクターが出てきたんですね。このあたりの、名優名画へのリスペクトの示し方がピクサー作品は本当に上品で感動します。

 耳切断映画三本目は『ローグ・アサシン』。ジェット・リーとジェイソン・ステイサムという、のちに『エクスペンダブルズ』でチームを組むことになる二人が共演。「日本のヤクザは殺した数だけ腕に輪の刺青を彫る」という、どこから仕入れたのかよくわからない、日本人にもピンとこない豆知識を白人の刑事が披露するシーンがあってわくわくします。ジェイソン・ステイサムの日本語も登場。
「コノダンガン、ヌカナイト、カノースルゾ」
「ワカッタカ!」
「イヤ、イヤ、イヤ……」
「ホネダッタ、ゴメン」

 僕は本当にハリウッド俳優の日本語セリフに弱いです。可愛いし。
 耳切断は中盤に登場。アニメ『輪るピングドラム』で曲がカバーされ、バンドARB時代がにわかに注目を集めている石橋凌がヤクザの組長を熱演。組員であるケイン・コスギの耳を日本刀で切り落とすという(日本人的には)贅沢なシーン。ケイン・コスギはそのあとジェット・リーとも対決。
 凄くどうでもいいんですが、途中に出てくる日本料理店の看板もかなり変で気になるんですよね。
『柳雪折れなし』
『馬鹿ほど恐いものはない』
 言葉の意味はそのままなんでしょうが、なんで看板に書いてあるんだ、という。『ローグ・アサシン』はわりと好きな映画で、この調子で語っていくと長くなるのでここまで。今回は「耳」特集だし。

 そしてメルギブの『パッション』。
 ペトロが切り落としたマルコスの耳を、イエスが手かざし一瞬で再びつなぎます。
 そして「剣に生きるものは、剣によって死ぬのだ」と一言。
 切り落とすだけでなく、直後に再生という珍しいシーン。
 ホラー映画『ヒルズ・ハブ・アイズ』にも。
 丘の住人たちとつながっているガソリンスタンドの管理人。
 彼に届けられるのは、まるでプレゼントのように箱に収められた人間の耳。
 これからとんでもないことになるぞ、という予兆系の使い方です。

 デイヴィッド・リンチの『ブルーベルベット』の耳の使い方もこの予兆系。
(以下、DVDの作品紹介より引用)
 赤いバラ、白いフェンス、青い空。絵葉書のようなアメリカの典型的な田舎町ランバートン。病院に父を見舞った帰り道、大学生のジェフリーは、野原で切り落とされた人間の片耳をみつけた。その耳の真相を追い求めていくうちに、謎めいたキャバレーの女性歌手ドロシーと知り合う。そして彼女をサディスティックに責めたてるドラッグ中毒のフランクとも関わりを持つようになり、次第に犯罪と暴力、SEXとSMの世界へと足を踏み入れていく……。

 事件の発端としてインパクト十分の不穏さです。しかもその耳、虫とかたかってるし。ちょっと髪の毛ついてるし。それを調べる解剖医が「ハサミで切られたみたいだな」と言った直後にハサミの映像が挿入されるし。さすがリンチというか、生理的感覚に対する嫌がらせみたいな映像を撮らせたら天下一品です。

 今、僕が思いつくのはこれくらいなんですが、戦争映画や時代劇でも探していったらもっとたくさんありそうですよね。耳切断映画。ここまで書いて思ったのは、もっと心理学的な意味もそのうち調べたいなーということ。自分で切るのは「もうこれ以上、音や人の話を聞きたくない」という意志表示でしょう。しかし問題は他人に切られるケース。たとえば先述の『ブルーベルベット』では、なぜ落ちているのが耳でなければいけなかったのか? プロット上は指でもいいはずなんですよ。監督の思いつき? 多分に感覚的なもの? こういうところに、監督の何か深い意図が隠されているのかもしれない(もちろん、そんなことは特にないのかもしれない)。
 有名な怪談に『耳なし芳一』がありますが、あれも結構気になってるんですよね。なぜ耳? 耳にお経を書き忘れたことで「オチ」がつくわけですが……。作者がオチをつけるために芳一はお経を書き忘れたのか、それとも芳一の耳を奪うのがこの物語の目的、テーマだったのではないか。このへんは、民俗学や妖怪の類に詳しい人に訊くと何か面白い答えが返ってきそうな気がします。
 レンタルDVDで観た邦画の『冷たい熱帯魚』も凄まじい傑作だったので感想を書きたかったのですが、とりあえず今回はここまで。『冷たい熱帯魚』の話は長くなりそうですし……。同じ監督の前作『愛のむきだし』も面白かったけど、新作はもっと凄かった! 次回更新ではWEB拍手へのレスなども。
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